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はじめに:この「研究室」がめざすこと

アンコール・トム(カンボジア)
Photo by H. Yumoto

 今や80億に迫る人々が暮らす地球社会では、飢餓や貧困、差別や抑圧、自然破壊や気候変動、そして、地域紛争や民族対立など、一日も早い解決が望まれる地球規模の問題群にわたしたちは直面しています。こうした深刻かつ喫緊の問題の解決や状況の改善に向けては、様々な外交努力や国際協力が続けられてきました。それと同時に、これら地球的課題(global issues)にたいしては、開発教育や環境教育、人権教育や平和教育、多文化教育やジェンダー教育、グローバル教育や国際理解教育、そして地球市民教育(GCED)や持続可能な開発のための教育(ESD)といった教育実践も国内外で展開されてきました。

SDGs 目標4「質の高い教育をみんなに」
Photo by Prado on Unsplash

 また、国連は2015年に「わたしたちの世界を変革する」ために「誰一人取り残さない」ことを理念に掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択し、その中で「持続可能な開発目標(SDGs)」を提示しました。その「目標(Goal)4」では「質の高い教育をみんなに」という標語を掲げて、多様で充実した教育機会へのアクセスを可能とすることや、上述の地球的課題に取り組む教育活動の普及推進が2030年までに目指されています。他方、「管理と競争」の中に追い込まれていく日本国内の教育現場を観れば、いじめや不登校、子どもの貧困や教育格差、海外にルーツを持つなどの多様な文化的社会的な背景を持つ子どもたち、そして多忙化を極める教員の職場環境など、教育や学校をめぐる困難な問題も顕在化して久しいものとなっています。

 ヒトやモノ、情報やマネーのグローバル化は今後もさらに進展していくでしょう。それだけでなく、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)も加速度的に進歩していくにつれて、今後の世界やわたしたちの人生は、ますます予見することが難しくなっていくでしょう。その時、「教育」や「学校」には何が期待され、何が要求されるのでしょう。その期待や要求に「教育」や「学校」は応えていくことができるでしょうか?

村の小学校で学ぶ子どもたち(北部タイ・メーワン)Photo by H. Yumoto

 本「研究室」が関心を向ける開発教育や地球市民教育などの地球的課題に取り組む教育活動は、現行の教育政策や教育制度の限界や問題点をはじめ、今後の「教育・学習」の役割や可能性を批判的かつ多面的に検討しようと試みてきました。そして「共に生きることのできる公正かつ持続可能な地球社会づくり」に向けて、教育や学校には何ができ、何ができないのかを明らかにしながら、学校や大学、家庭や職場、あるいは、市民活動や地域活動の中に新たな教育の実践やネットワークを創出し、「学び合う組織・地域・社会」を形成していくことを提案していきたいと、本「研究室」では考えています。

プロフィール

◯湯本浩之(ゆもと・ひろゆき)宇都宮大学留学生・国際交流センター教授・副センター長

上智大学文学部卒業後、在中央アフリカ共和国日本大使館に外務省在外公館派遣員として2年間在勤。帰国後、現在の(認定NPO法人)国際協力NGOセンター(JANIC)事務局次長や(認定NPO法人)開発教育協会(DEAR)事務局長を歴任。立教大学大学院教育学研究科博士後期課程中退後、立教大学文学部特任准教授を経て、2017年10月より現職。宇都宮大学では、国際学部や地域創生科学研究科において参加型学習やアクティブ・ラーニングの理念や手法を活用して、開発教育やグローバル教育をはじめ、SDGsやESDなどに関連した授業を担当している。