これまでのしごと

 大学の専任教員になる前は、2つのNGOでスタッフとして20数年、仕事をしていました。そこで経験した実務や実践の多くは開発教育やNGO活動に関わるものですが、そうしたこれまでのわたしの「しごと」が現在の教育・研究活動の基盤となっています。
 その「しごと」の概要について、当時のNGO活動推進センター(現在のNPO法人国際協力NGOセンター〔JANIC〕)と開発教育協議会(現在のNPO法人開発教育協会〔DEAR〕)とで担当した業務や事業を中心に紹介します。そこから、文献や論文には書かれていない当時の実情や背景を読み取ってみてください。NGO活動や開発教育の現場では、どのような業務や事業が行われているのか、NGOの職員(スタッフ)とはどのような仕事をしているのか、少しでも参考になればと思います。ただし、わたしが在職したJANIC(ジャニック)とDEAR(ディア)というNGOは、日本の数あるNGOの中でも特異な存在であり、海外で村落開発や技術指導などの事業(プロジェクト)を行うNGOとは異なっている点は予めお断りしておきます。なぜなら、JANICは現在ではNGO約100団体が加盟する日本では数少ないNGOの連合体(ネットワーク組織)であり、DEARは開発教育を専業とするNPO法人としては日本でほぼ唯一の団体であるからです。
 なお、NGOで仕事をする以前の学生時代から身の振り方が定まらなかっ時期までの「あてのなかった20代」の行状については、別ページを参照して下さい。

1)NGO活動推進センター(JANIC)時代:1988年6月~1996年5月
2)開発教育協会(DEAR)時代:1996年8月~2013年3月

☆地球のことば(4)

The time has come, to say fair’s fair
To pay the rent, to pay our share
The time has come, a fact’s a fact  
It belongs to them, we’re gonna give it back

How can we dance when our earth is turning?
How do we sleep while our beds are burning?

もう逃げられない 公平にやろうじゃないか
借りを返そう これまでのツケを払うんだ
認める時が来たんだ 事実は変えられない
この土地はかれらのもの 返そうじゃないか
地球が岐路に立つ時に 踊っている場合じゃないだろう?
ベッドが燃えてる時に 眠れるはずがないだろう?
               (仮訳:湯本浩之)

ミッドナイト・オイル(Midnight Oil ロックバンド オーストラリア 1972–2002, 2016–現在)
Original Resource: R. Hirst, J. Moginie & P. Garrett, “Beds Are Burning”, Midnight Oil, Diesel and Dust, 1987.
出典:ハースト、モギニー&ギャレット「ベッズ・アー・バーニング」ミッドナイト・オイル『ディーゼル・アンド・ダスト』EPIC/SONY Records、1988年。
Official Music Video: Midnight Oil♪ ‘Beds Are Burning‘ YouTube.

<コメント>
 ミッドナイトオイル(以下「オイル」)は、80年代から90年代にかけてオーストラリアで絶大な支持と人気を得たバンドである。洋楽好きにとって、この時代のオージーバンド(Aussie Bands)と言えば、AC/DCやリトルリバーバンドをはじめ、エアサプライ、メンアットワーク、インエクセス(INXS)、クラウデッドハウスなどの名前が思い浮かぶだろう。いずれもオーストラリア国内はもちろん、欧米の音楽チャートを席巻し、商業的にも成功を収めたバンドである。
 しかし、オイルがこれらのバンドと一線を画しているのは、オイルが「行動するロックバンド」であり、環境・人権・平和といった政治に関わる問題に対して積極的に発言し行動してきたことである。オーストラリアの先住民であるアボリジナルピープル*1 の居住地で無料コンサートを開いたり、1989年に米国のアラスカ沖で起きたタンカー「ヴァルディーズ号」による史上最大級の重油流出事故に対して、オイルは翌年にニューヨークのエクソン本社前で抗議のためのゲリラライブを行っている(参考:DVD『Black Rain Falls』Sony Music Entertainment Australia, 1990)。本曲のように先住民の人権やかれらの大地をテーマとした楽曲も多いほか、太平洋戦争の終戦40周年にあたる1985年発表のミニアルバム『Species Deceases』に収録された「Hercules」では「広島平和公園の鐘を鳴らせ」と歌っている。
 リードボーカルを務めるピーター・ギャレット(Peter Garrett, 1953-present)は、反捕鯨運動家としても知られ、音楽活動と併行して環境NGOの役員も務めていたが、2002年にオイルを解散すると政界に転身。労働党政権時代の環境・芸術大臣や教育・青年大臣など歴任し、2013年の総選挙で労働党が敗北したのを機に政界を引退している。
 その後、ギャレットは2016年にオイルを再結成すると、2020年に先住民アーティストをゲストに招いてミニアルバム『The Makarrata Project*2 を発表。17年ぶりとなるファーストシングル「Gadigal Land」は、18世紀に最初の流刑地となった先住民「ガディガル族の土地」を、また、セカンドシングル「First Nation」はオーストラリアの先住民をそれぞれ意味している。

*1 日本語でオーストラリアの先住民を表す際に、従来から「アボリジニ(Aborigine)」という用語が使用されてきた。しかし、オーストラリア国内では近年この用語には差別的な意味があるとして、代わりに「Aboriginal peoples/Australians)」や「Indigenous peoples/ Australiansをはじめ、「First Nations」や「First Peoples」という用語が使われている
*2 オーストラリアの先住民がその市民権を認められた1967年から50年目にあたる2017年5月に、大陸中央部の聖地ウルル近郊で、アボリジナルピープルとトレス海峡諸島民の代表者250名以上が参加して、「ファーストネイションズ(以下「先住民」)全国憲法大会」が開催され、「心からのウルル声明(The Urulu Statement from the Heart)」が採択された。この「声明」では、先住民の声を憲法に反映させることや、先住民の歴史について真実を話し合い、政府との合意を形成するプロセスを監督下に置く「マカラタ委員会(Makarrata Commission)」の設置が明記された。なお、「マカラタ(Makarrata)」とは、アーネムランドに居住するヨルング族(the Yolngu people in Arnhem Land)の言葉で、「争いの後に両者が集まり、過去の分断の傷を癒やす」という意味であるという。

(参考資料)
 朝日新聞「 (世界発2018)豪州の日、入植は侵略か 国民の休日、続く論争「先住民の土地」各地でデモ」2018年2月1日。
 ミッドナイトオイル『ディーゼル・アンド・ダスト』(EPIC/SONY Records、1988年)収録の大森庸雄氏のライナーノーツ。
 Midnight Oil “Black Rain Falls”, DVD, Sony Music Entertainment Australia, 1990=2014.
 Midnight Oil Website (URL: https://www.midnightoil.com/).

 Peter Garrett Website (URL: https://petergarrett.com.au/).
 The Urulu Statement Website (URL: https://ulurustatement.org/).
 SBS日本語放送 ”Japanese: The Uluru Statement from the Heart“.