「開発教育(Development Education)」と呼ばれる教育活動の普及推進を目的とした民間教育団体である開発教育協議会(現在の認定NPO法人開発教育協会〔DEAR〕)の事務局長として、16年余にわたって携わった活動や業務は以下の通りです。
1)政策提言
以下のような政府の懇談会に対して、あるいは協議会を通じて、ODA政策やJICA事業における開発教育のあり方やその目的などに関して政策提言や政策協議を行いました。
①「第1次ODA改革懇談会」
1997年4月に外務大臣の私的懇談会(正式名称「21世紀に向けてのODA改革懇談会」、座長:河合三良・国際開発センター会長)として設置された同懇談会に対して政策提言を実施。同懇談会は1998年1月に最終報告書を発表。
②「第2次ODA改革懇談会」
2001年4月に外務大臣の私的懇談会(座長は渡辺利夫・拓殖大学国際開発学部長)として設置された同懇談会に対して政策提言を実施。同懇談会は2002年に最終報告を発表。
③「NGO-JICA協議会・開発教育小委員会」
NGOとJICAの政策対話や政策協議の場として1998年度から開始されたNGO-JICA協議会の小委員会として、翌1999年度に「国際協力に関する市民の理解及び参加の促進小委員会」が設置。2003年度には「開発教育小委員会」と改称し、2007年度まで合わせて28回開催された本小委員会のNGO側メンバーとして参加。2009年2月には総括報告書(総37頁)を発表。
2)国内ネットワーク
開発教育の普及推進を目的としたセミナーを全国各地で企画運営したほか、開発教育の実践や実務を担う学校教員をはじめ、NGOや各種団体の担当者とのネットワークづくりを図りました。
①開発教育地域セミナー(協力:外務省、1996~2003年度)
開発教育の紹介や実践課題の共有を目的とした「開発教育地域セミナー」を毎年度全国6ヵ所で開催地の実行委員会と共催。基調講演をはじめ、分科会やワークショップなどを企画運営。各セミナーには、学校教員、NGO/NPO関係者、青年海外協力隊関係者、そして一般市民ら約100~200名が参加。各報告書を作成。
②開発教育全国担い手会議(協力:外務省、1996~2003年度)
上記の「地域セミナー」の成果や課題を共有することを目的した1泊2日の標記会議の企画運営を担当。各地の「同セミナー」実行委員会関係者をはじめ、研究者、NGO関係者、国際交流協会等の担当者ら約50名が毎年度参加。各報告書を作成。
③開発教育全国ネットワーク会議(2004~2013年度)
各地における開発教育の実践や課題を共有することを目的とした1泊2日の標記会議の企画運営を担当。各地で開発教育の研究・実践・実務に携わるNGO、社会教育団体、大学、国際交流協会などの関係者ら約50名が参加。各報告書を作成。
<参考>当時の国内ネットワークの詳細に関しては、以下を参照されたい。
湯本浩之「日本における『開発教育』の展開」江原裕美(編)『内発的発展と教育:人間主体の社会変革とNGOの地平』新評論、2003年、253-285頁。
3)開発教育全国研究集会
開発教育の実践や研究の成果や課題を共有する年に一度の機会として、全国研究集会(全研)の企画運営に携わりました。事務局在任中の開催実績は次の通りです。
1996年度 第14回 東京 「豊かさとは何か、貧しさとは何か」
1997年度 第15回 大阪 「生きる力と地球市民の学び」
1998年度 第16回 横浜 「地球市民を考える」
1999年度 第17回 東京 「子どもの社会参加と開発教育」
2000年度 第18回 東京 「グローバリゼーションと21世紀の開発を考える」
2001年度 第19回 川崎 「学校・地域・NGOが創る開発教育:今、教育を変えるのは私たち」
2002年度 第20回 京都 「くらしとまなびの未来をえがく:寛容・理解・共生の市民社会をつくるために」
2003年度 第21回 東京 「平和を築く学び:世界の『現実』と開発教育」
2004年度 第22回 福岡 「いのちを育む学び:グローバルに、ローカルで」
2005年度 第23回 東京 「持続可能な社会をつくるために:現代の『平和』を考える」
2006年度 第24回 東京 「参加・学び・国際協力」
2007年度 第25回 横浜 「学びの場の再考:協力的な関係づくりをとおして」
2008年度 第26回 東京 「『多文化共生』と教育を考える:スローガンとしての多文化共生を超えて」
2009年度 第27回 仙台 「くらしと世界をむすぶ学び」
2010年度 第28回 東京 「学びの場におけるファシリテーター」
2011年度 第29回 東京 「オルタナティブな教育と開発教育」
2012年度 第30回 東京 「開発教育の30年をふりかえる」
4)研究誌『開発教育』
開発教育協議会時代から編集発行されてきた機関誌『開発教育』が「実践のための研究誌」として位置付けられることとなり、その企画編集に取り組みました。事務局在職中に担当した各号は以下の通りです。
Vol. 54 特集『参加型開発と参加型学習』(2007年10月、発行:明石書店)
Vol. 55 特集『開発教育と市民性』/小特集『アフリカと日本』(2008年10月、発行:明石書店)
Vol. 56 特集『開発教育の教師・指導者とファシリテーター』(2009年、発行:明石書店)
Vol. 57 特集『オルタナティブな経済と開発教育』(2010年、発行:明石書店)
Vol. 58 特集『オルタナティブな教育と開発教育』(2011年、発行:明石書店)
5)調査研究(組織内)
開発教育に関する以下のような調査研究活動に携わりました。
①英国開発教育団体訪問調査(1999年10月)
英国の開発教育の現状調査を目的に、英国開発教育協会や各地の開発教育センターをはじめ、国際開発省やオックスファムなどの担当者から聞き取り調査を実施。2000年2月に報告書(総24頁)を共同作成。
②「開発教育の評価」研究事業(2003年度、助成:一食平和基金)
開発教育の評価をテーマとする研究会を企画運営。開発教育の実施状況に関する実態調査をはじめ、市民講座や学習教材、講師派遣事業などに関する事例研究を実施。2004年3月に報告書(総97頁)を共同作成。
③持続可能な開発のための教育(ESD)総合カリキュラム開発のための調査研究事業(2006~2008年度、助成:地球環境基金)
国連「持続可能な開発のための教育の10年」を機に、開発教育の知見や経験に基づいたESDの総合カリキュラム開発をテーマとした3年間の調査研究活動を企画運営。2009年3月に最終報告書(総182頁)を共同作成。3年間の調査研究の成果をもとに、2010年8月に『開発教育で実践するESDカリキュラム:地域を掘り下げ、世界とつながる学びのデザイン』を学文社から発行。
6)調査研究(組織外)
以下のような外部のNGO関係者との共同研究や外部組織の調査研究活動に参加しました。
①未来のための教育推進協議会「市民による生涯学習」調査研究(1997年度、助成:庭野平和財団)
ドイツのハンブルグで開催されたユネスコ主催の第5回国際成人教育の会議を機に、日本の教育NGOなどによる市民教育や成人教育の事例紹介・課題研究を行い、1998年3月に報告書(総106頁)を共同作成。
②国際協力事業団(JICA)「国民参加型協力推進基礎調査『開発教育の支援のあり方』調査研究(1998年度)
日本でのNGOや自治体等による開発教育の実態調査とJICAによる開発教育支援の方策を検討し、今後に向けた基本方針とアクションプランを提案。1999年3月発行の報告書(総223頁)を分担執筆。
③立教大学「東アジア地域環境問題研究所」外部評価(2005年度)
同研究所の5年間の研究活動に対する外部評価を実施。2006年3月発行の「最終報告書」(総119頁)の中で「立教大学東アジア地域環境問題研究所の研究成果と課題」と題する評価コメント(116~118頁)を提供。
④NGO活動推進センター/国際協力NGOセンター(JANIC)「国際協力に携わる日本の市民組織」実態調査 (1997・1999・2001・2003年度)
1989年から隔年でJANICが実施していた標記調査やその成果物である『NGOダイレクトリー』の編集作業に編集委員として参加。現在、同『ダイレクトリー』はJANICのウェブサイトから情報が提供されるようになっている。
7)他団体との共催事業
①「地球市民アカデミア」(1996年度〔第3期〕途中から~2003年度〔第10期〕)
1994年度から東京YMCA国際奉仕センター、東和大学国際教育研究所、そしてNGO活動推進センター(JANIC)の三者共催で開講された参加体験型の約10ヶ月間の市民講座に、1996年度(第3期)から2003年度(第10期)まで共催団体または協力・後援団体としてその企画運営を担当。その後は同「アカデミア」の修了生の活動を支援するための「アカデミア・ファンド」の運営を担当。当時行われていた国際理解講座などは講義座学形式のものが大半で、ワークショップやグループワークを取り入れたこのプログラムは時代を先駆けるものであった。
なお、同「アカデミア」はその後、修了生主体の運営形態を変えながら2008年度〔第15期〕まで活動が継続し、DEARも協力・後援団体として支援した。
②「国際協力フェスティバル」(1996年度~2000年度)
10月6日の「国際協力の日」に因んで10月上旬に開催された同「フェスティバル」の実行委員会に当時の開発教育協議会の担当者として出席。当日は来場者を対象とした出展テントの運営や体験ワークショップなどを担当。同「実行委員会」は、開発教育協議会のほかに、NGO側からはNGO活動推進センター(JANIC)、ODA関係機関として、国際協力銀行(JBIC)、国際協力事業団(JICA)、(財)国際協力推進協会(APIC)、(社)青年海外協力協会(JOCA)の6団体で構成され、外務省がこれに「協力」した。
なお、同「フェスティバル」は2001年度からは実行委員会の構成が変わるとともに、2005年度からは「グローバルフェスタJAPAN」と改称して現在に続いている。
8)国際会議への参加
①ユネスコ第5回国際成人教育会議「中間レビュー会議」(2003年9月)
1997年にハンブルグで開催された第5回国際成人教育の中間年にバンコクで開催された標記会議に参加。地域別分科会において、日本の開発教育の現状や課題を紹介。
②グローバル教育ロンドン会議「欧州のグローバル教育の改善に向けて」(2003年9月)
欧州評議会および英国開発教育協会(DEA)などがロンドン大学教育研究院(UCL-IOE)で共催した標記会議に出席。日本の開発教育の現状や課題のほか、「開発教育地域セミナー」を事例として紹介。
③アジア太平洋ESD(持続可能な開発のための教育)戦略計画ワークショップ(2004年11月)
ユネスコのアジア太平洋国際理解教育センター(APCEIU)などがソウルで共催した標記会議に参加。日本におけるESDや開発教育の現状や課題について紹介。
④国際会議「持続可能な開発のための教育:環境教育と開発教育を超えるもの」(2005年9月)
国連「ESDの10年」を開始を機に、立教大学東アジア地域環境問題研究所が主催し、開発教育協会(DEAR)と持続可能な開発のための教育推進協議会(ESD-J)が共催した標記会議に実行委員として参画。
④台日市民社会フォーラム「草の根ネットワークをどう構築するか」(2007年6月)
台湾の市民組織が共催する標記会議に参加。「グローバル時代における教育・文化」をテーマとする分科会で、日本の開発教育の現状や課題を報告。
⑤ユネスコ第6回国際成人教育会議(CONFINTEA VI、2009年11~12月)
ブラジルのベレンで開催された標記会議に参加。ワークショップにおいて、日本の開発教育の現状や課題を紹介したほか、日本の社会教育関係者らとCSO(市民社会組織)レポートを共同作成。
9)NPO法人化
設立20周年(2002年12月)を機に、団体名を開発教育協会(Development Education Association and Resource Center, DEAR)と改称し、2003年3月に特定非営利活動法人格を取得。一連の法人化業務を担当。
地球のことば(5)
共に生きるために That We May Live Together 1973年4月
髙見 敏弘(Takami Toshihiro 牧師・アジア学院 創設者 1926-2018)
出典:高見敏弘『土とともに生きる:アジア学院とわたし』日本基督教団出版局、24頁、1996年。
<略歴>
1962年 アジア学院の前身となる鶴川学院農村伝道神学校東南アジア科長に就任。
1973年 学校法人アジア学院を創設と同時に理事長兼「アジア農村指導者養成専門学校」校長に就任。
1987年 NGO活動推進センター(現在の(NPO法人)国際協力NGOセンター)理事長(~1996年)。
1993年 アジア学院名誉学院長。
1996年 ラモン・マグサイサイ賞(平和・国際理解部門)受賞。