大学院(修士課程)への進学を考えている方へ

 大学院の修士課程に進学し、本「研究室」での研究指導を希望される方は、研究室への事前訪問(オンラインも可)を歓迎しますので、出願期限の3ヶ月前を目途にこちらまでご連絡ください。とくに留学生(正規生または研究生)の場合は、以下の点に留意して、事前訪問や出願をご検討ください。なお、研究室への事前訪問の有無が入学試験の合否を左右することはありません。 ※本研究室では、2022年4月入学以降の研究生の指導教員、2022年度10月入学以降の修士課程の指導教員をお引き受けできませんことをお知らせします。本ページの記述は書き残しますので、ほかの研究室に研究指導を仰ぐ際の参考として下さい(追記:2022年2月20日)

1)研究目的について
 修士課程の標準的な修業年限は2年です。修士課程では、この限られた2年という時間の中で、専門的な調査研究を実施し、学術的な研究成果を導き出すことが期待されます。そのためには、入学時点で研究目的が明確であることが重要です。修士課程に入学してから「何を研究しようか?」と悩んでいては、2年間で質の高い修士論文を書き上げることは難しいでしょう。言い換えれば、入試の面接で研究の目的や内容を明確に説明できることがたいへん重要だということです。また、修士課程での研究は、学部での研究内容をはじめ、卒業論文の成果や課題をさらに発展させたものとなるのが一般的です。
 しかしここで、とくに海外の大学を卒業して本「研究室」での研究指導を希望する留学生の方々に留意していただきたいことがあります。それは修士課程への出願に際して、学部での専攻分野と異なる研究分野を志願する方がとても多いということです。たとえば、本「研究室」には「先生の研究分野に興味があります」あるいは「グローバル教育にたいへん関心があります」という理由で、「研究指導をお願いします」というメールが毎年、数多く届きます。しかし、「興味や関心がある」だけでは、志望の動機や研究の目的としては不十分ですし、「グローバル教育」という領域はたいへん幅広いので、研究の範囲や目的を丁寧に絞り込む必要があります。
 したがって、自分の問題関心を深めて、何をどのように研究するのかという研究の目的や内容を明らかにすることが重要です。その目的や内容は学部時代の学修や研究の延長線上にあるはずですが、志願される方(特に留学生の方)の学部での専攻分野をお尋ねすると「日本語」や「国際ビジネス」などである場合が大半です。本「研究室」で「グローバル教育」を研究されたいのであれば、学部で教育学を専攻し、学士を取得していることや、少なくとも教育学を副専攻としていたことなどが強く望まれます。教育学の基本的知識や教育に関する調査研究、あるいは教育に関する実務や実践の経験のないままに修士課程で教育学を研究することは困難ですし、修士課程に入学してから学部の教育学を学修することもできません。学部で「日本語」を専攻された方が、修士課程で「日本語学」や「日本語教育」を研究されるのであれば、研究の目的や内容に継続性が生まれますが、たとえば、学部の日本語学科を卒業しただけでは、「グローバル教育」の基礎を学修したことにはならないことをご理解ください。
 なお、修士課程への進学を希望される社会人の方の場合は、学部当時の専攻分野に関係なく、学部卒業後の社会経験や実務経験などと研究計画との関連性が重視されます。また、出願に際して、宇都宮大学大学院の地域創生科学研究科では「一般選抜」のほかに「社会人特別選抜」があるほか、多文化共生学プログラムと、本「研究室」が所属するグローバル・エリアスタディーズプログラムでは「国際交流・国際貢献活動経験者特別選抜」が実施されています。グローバル教育とも接点が多い国際協力や国際貢献などの実務や実践の経験をお持ちの方は、こうした特別選抜での出願をご検討ください。
 いずれにしても、「◯◯先生の研究分野に関心があるから、研究指導をお願いする」というのは本末転倒です。研究指導を依頼される側の教員からすれば、「この研究を指導してみたい」と思わせてくれるような研究計画書を期待しているのです。
 以上、出願手続等の詳細に関しては、宇都宮大学「入試情報」をご参照ください。

2)英語と日本語の語学力について
 一般論となりますが、修士課程の授業では英語文献がテキストになることも多く、また、研究目的にもよりますが、海外の事例や現状などとの比較研究が必要となることもあり、英語の文献や資料を読解する力量が必要となります。とくにグローバル教育論の場合は、国連や国際機関、あるいは欧米諸国の教育政策や実践事例などを分析の対象とすることも多いため、英語の専門書や報告書の内容を理解できる英語能力が必要となります。また、日本語能力については、とくに留学生の皆さんには、次の点についてぜひご留意いただきたいと思います。
 修士論文を日本語で執筆する場合、数多くの日本語の専門書や学術論文を読み込んでいくことになるでしょう。したがって、日本語の専門書や学術論文の内容を十分に読解できる能力が必要です。また、学術論文のひとつである修士論文では、その内容の論理性や学術性、論文に使用する日本語表現の専門性や正確性が問われます。したがって、高い日本語能力が必要となりますが、その「高さ」は、たとえば日本語能力試験(JLPT)で言えば「N1以上」の能力が必要であると本「研究室」では考えています。そもそも日本語能力試験は学術的な日本語能力を問う試験ではないため、「N1以上」という表現は不的確ですが、本「研究室」での研究や修論執筆では日本語能力試験とは異なる高い日本語能力が必要となることをぜひご理解ください。

3)学費や生活費などの負担について
 これも一般論となりますが、大学院の入学金や授業料は、国立大学とは言え、けっして安価な金額ではありません。しかも、日常の生活費や通学費は当然のことながら、そのほかにも授業や研究に必要な教科書やパソコンなどをはじめ、現地調査や団体訪問などを実施する場合にはさらに旅費交通費などが必要となります。このように修士課程の2年間に必要となる諸経費を負担できるように計画的にご準備ください。
 過去の事例をご紹介すれば、たとえば、留学生の中には、海外からの送金が滞ってしまうなどのさまざまな事情から、「留学」の在留資格で定められている週28時間の上限いっぱいにアルバイトをしている学生が少なくありません。本来、授業や研究のために多くの時間を費やさなければならない中で、週28時間をアルバイトに費やさざるを得なくなると、授業や研究が疎かになりかねず、質の高い修士論文を執筆することも危ぶまれます。
 もちろん、宇都宮大学でも学費の免除や徴収猶予の制度があるほか、昨今のコロナ禍の中では緊急奨学金が支給されています。しかし、予算が限られていることもあり、これらを必要としている学生全員が支援の対象となるわけではなく、その対象となっても金額的に十分であるとは限りません。
 以上、学費や生活費などの諸経費をどのように負担するのかについても十分なご準備をお願いします。

4)「(大学院)研究生」について
 以上をご理解の上、修士課程への進学を志望する学部卒の方で、ある特定の研究課題について指導を受けながら、出願や受験を準備されたい方は「(大学院)研究生」制度を利用することができます。詳細は「留学生・国際交流センター研究生について」をご参照ください。(Jan. 5, 2021)

☆地球の言葉(23)

熟せば ヤシは葉も実も落とす
パパラギの生き方は
未熟なヤシが 葉も実もしっかり
かかえているようなもの
・・・
ヤシの木のほうが
パララギよりも ずっとかしこい

ツイアビ(南海の酋長 ウポル島・西サモア 生没年不詳)
出典:エーリッヒ・ショイルマン (編著)『パパラギ:はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』岡崎照男 (訳)、立風書房、1981年、136頁。文庫版(SB文庫、2009年、179頁)。