①論文は先行研究や資料をふまえて書く
論文を書くときには、先行研究、統計資料、新聞記事、ウェブサイト、報告書など、さまざまな文献や資料を参照することになります。論文は、自分の思いつきや感想を書くものではありません。すでに明らかにされている知見や議論をふまえたうえで、自分の問いや主張を組み立てていくことが、論文作成の基本です。
そのため、他者の文章、資料、データ、図表などを用いるときには、それがどこから来た情報なのかを明確に示す必要があります。その方法として、「引用」と「出典」と「文献一覧」が重要となりますす。
②「引用」と「参照」の違い
他者の文献や資料を論文の中で用いる方法には、大きく分けて「引用」と「参照」があります。
「引用」とは、他者の文章や資料、データや図表などを、自分の論文のなかで具体的に用いることをいいます。引用には、原文をそのまま書き写す場合を「直接引用」と、他者の著作や研究成果などに言及したり、その内容を自分の言葉で要約・整理したりする「間接引用」があります。
「直接引用」とは、他者の文章を原文どおりに示すことです。この場合には、この場合には、引用する原文の前後に一重の引用符(「」)を付けます。引用する原文が2行以上になるような場合は、段落を分けて引用文として示す必要があり、これをとくに「段落引用」といいます。また、引用の際に、原文の一部を省略する場合や、必要に応じて語句を補う場合にも、原文の意味を変えないように注意しなければなりません。
これに対して、「間接引用」とは、たとえば、複数の先行研究がすでに存在していることをまとめて紹介したり、ある著者の主張や理論を要約したり、自分の言葉で簡潔に言い換えたりする場合がこれにあたります。後者については「要約引用」と呼ぶこともあります。間接引用では原文をそのまま書き写していませんが、他者の文献や資料に基づいて書いているため、必ず出典を示す必要があります。
一方、「参照」とは、ある文献や資料を参考にして、自分の説明や考察の根拠にすることです。文章をそのまま引くわけではなくても、その文献の内容をふまえて論じている場合には、「参照した」といえます。たとえば、複数の先行研究をもとに研究動向を整理する場合や、ある報告書のデータをふまえて社会状況を説明する場合などがこれにあたります。
なお、「間接引用」と「参照」は重なる部分があります。いずれも原文をそのまま示すものではありませんが、特定の著者の考え方や調査結果を自分の言葉で紹介する場合は「間接引用」、文献や資料の内容をふまえて自分の説明や考察の根拠にする場合は「参照」と考えると分かりやすいでしょう。いずれの場合も、他者の文献や資料に基づいて書いている以上、出典を示す必要があります。
ここでとくに注意しなければならないのは、他者の文章や資料、データや図表などを、出典を示さずに自分のもののように用いてはならないということです。これは、盗用あるいは剽窃(ひょうせつ)にあたり、論文作成においては厳に避けなければならない行為です。原文をそのまま書き写した場合だけでなく、文章の一部を言い換えただけの場合や、他者の考え方や分析・調査結果を自分の考えであるかのように書いた場合も、盗用や剽窃とみなされることがあります。
また、引用や参照を行う際には、文献や資料の内容を正確に扱う必要があります。自分の主張や議論に都合のよいように、引用文の一部を不自然に省略したり、データの数値を変えたり、図表の意味が変わるように加工したりすることは、改竄(かいざん)にあたります。改竄は、盗用や剽窃と同じく、研究上の重大な不正行為です。
したがって、引用であっても、参照であっても、他者の文献や資料に基づいて書く場合には、必ず出典を示すとともに、その内容を正確に扱う必要があることに留意してください。
③ 引用・参照した場合は、必ず出典を示す
重要なことのは、直接引用であっても、間接引用であっても、また、参照であっても、他者の文献や資料に基づいて書いている場合には、必ず出典を示すということです。
文章を少し言い換えただけで出典を示さない場合や、他者の考え方を自分の考えであるかのように書いた場合は、盗用や剽窃とみなされることがあります。悪意がなかったとしても、不適切な引用や出典表記は、論文全体の信頼性を大きく損ないます。
本文中で引用や参照を行った箇所には、その情報の出所を「出典」として明示する必要があります。たとえば、著者名、出版年、ページ数などを本文中または注に記載します。どのような形式で出典を示すかは、学問分野や大学・学部・ゼミなどの執筆要領によって異なりますが、重要なのは、読者が「その情報はどこから来たのか」を確認できるようにすることです。
④ 論文末尾の「参考文献」とは何か
本文中で引用または参照した文献や資料は、論文の末尾に「参考文献(一覧)」としてまとめます。ここでいう参考文献とは、論文を書くうえで実際に根拠として用い、本文中で出典を示した文献や資料のことです。単に読んだだけの文献や、論文の記述に直接用いていない文献を広く並べるものではありません。
したがって、本文中で出典を表記した文献は、原則として参考文献(一覧)にも掲載します。反対に、参考文献(一覧)に掲載されている文献は、本文中で実際に引用または参照されている必要があります。本文中には出てこない文献を、見栄えのために参考文献(一覧)に加えることは適切ではありません。
⑤ 参考文献に記載する情報
「参考文献(一覧)」には、著者名、出版年、書名、出版社、論文名、掲載誌名、巻号、ページ、URL、閲覧日などを、定められた形式に従って記載します。
書籍、論文、新聞記事、報告書、ウェブサイトなど、資料の種類によって必要な情報は異なります。これらの文献を読んだ段階から、これらの情報を記録しておくと、あとで文献一覧を作成するときに困りません。
⑥ 引用・出典・参考文献は、論文の信頼性を支える
引用や参照、出典表記や参考文献(一覧)は、単なる形式上の決まりではありません。それらは、先行研究や資料などに対する敬意を示すとともに、自分の論文の信頼性を高めるための重要な手続きであり、論文を執筆する者が身に付けておくべき基本的な作法です。どこまでが先行研究や資料に基づく内容で、どこからが自分自身の考察なのかを明確にすることで、読者は論文の根拠や論理の流れを正確に理解することができます。
とくに卒業論文や修士論文では、引用の仕方が不十分であったり、出典表記が欠けていたりすると、論文全体の評価に大きく影響します。悪意がなくても、出典を示さずに他者の文章や考えを用いれば、不適切な引用と判断されることがあります。そのため、文献や資料を読んだ段階から、著者名、書名、出版年、ページ数、URL、閲覧日などを必ず記録しておくことが大切です。
論文を書く際には、「何を引用したのか」「どこから引用したのか」「なぜその引用が必要なのか」を意識してください。引用や参照は、自分の文章を長く見せるために行うものではありません。自分の問いや主張を補強するため、先行研究との関係を示すため、あるいは重要なデータや見解を正確に紹介するために行うものです。
つまり、引用、出典表記、参考文献(一覧)は、論文を根拠やデータに基づいた学術的な文章にするための土台です。面倒に感じるかもしれませんが、これらを丁寧に行うことによって、論文は単なるエッセイや感想文ではなく、信頼できる研究成果として読まれるものになります。
なお、引用、出典、参考文献(一覧)の具体的な表記の方法については、「5)執筆要領」を参照して下さい。